抄録
【目的】
長崎県は県内に在住する65歳以上のひとり暮らし被爆者を対象に、心の悩み、生活上の困りごと、医療・福祉の問題などに関する総合的な心身のサポート事業を立案した。
【方法】平成18年3月に3,291人に対し、訪問相談員の訪問を希望するか否かの確認を郵送により調査した。回答のあった2,010人のうち、596人が訪問を希望していた。1年目は361人を対象に訪問活動を行った。
訪問時には、被爆体験聞き取り調査項目、精神的健康度を評価するGHQ(12項目)、被爆体験のインパクト度を評価するIES-R(22項目)、生活の質を評価するWHO-QOL(26項目)などを用いた情報も収集された。
今回は、データ入力を完了した255人のうち、GHQ、IES-R、WHO-QOLのいずれかの無回答があった84人を除外し、残り171人を最終的な解析対象として中間報告を行う。
IES-Rを低得点群(24点以下)と高得点群(25点以上)の2群に区分し、2群間でWHO-QOL得点およびGHQ得点の比較を行った。平均の比較にはウィルコクソン検定を、頻度の比較にはカイ二乗検定を用いた。
【結果】
IES-R高得点群におけるGHQ平均点は3.17点、IES-R低得点群におけるGHQ平均点は1.42点となっており、IES-R高得点群のGHQ平均点は有意に高かった。また、IES-R高得点群におけるWHO-QOL平均点は2.90点、IES-R低得点群におけるWHO-QOL平均点は3.13点となっており、IES-R高得点群のWHO-QOL平均点は有意に低かった。
これらの結果から、被爆体験がトラウマとして強く残っている被爆者は、そうでない被爆者に比較すると、現在の精神的健康度が悪く、日常生活の質が低いことが確認された。