抄録
イメージングプレート(Imaging Plate;IP)に一定期間90Srを含む歯を置くと、β線放出核種の濃度の分布がわかる。これは、IPが輝尽性発光現象を用いたディジタルラジオグラフィと呼ばれる二次元の放射線イメージセンサシステムで、各種放射線に対して高感度・広いエネルギー領域での測定が可能であるからである。
今回は、今現在の汚染地域の汚染状況を知るために、旧ソ連の汚染地域の動物の歯を用いて実験を行った。ロシアのウラル地方は、1957年にMayakで起きた化学的爆発により高レベル放射性廃棄物の飛散で汚染された地域である。また、カザフスタンのセンパラスチンスク核実験場では、1949年から40年の間に計467回核実験が行われた。これらの地域から採取した動物の歯をIPで測定し、それぞれの90Srの濃度を求めた。採取した試料をダイヤモンドカッターで1mmの厚さにスライスし、スライスした歯と濃度既知標準試料を同じIPに乗せ、鉛で作られた箱に1週間放置したのち、IP測定装置である富士フィルム株式会社製BAS-1800_II_で測定した。また、画像処理ソフトであるMulti Gauge V3.0で画像処理を行い、信号強度を求め、標準試料との比較から90Srの濃度を得た。
この結果を既知土壌汚染レベルと比較を行うと、ロシアでは、土壌汚染レベルが高いとされるOzyorskoeで10.0Bq/gと90Srの濃度が高く、低い土壌汚染レベルとされるArgayashでは0.03Bq/gと90Srの濃度が低いという結果が得られた。このことから、一般的には土壌汚染レベルが高くいほど90Srの濃度が高くなると思われる。また、同様にカザフスタンも比較を行うと、爆心地で付近では1.87Bq/gと90Srの濃度が高いという結果が得られた。また、爆心地以外の地域であるMaysk districtでも0.50Bq/gと90Srが含まれている結果が得られ、今なお汚染が続いていることが認められた。
Keywords
イメージングプレート 90Sr 放射線事故