日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: HP-251
会議情報

被ばく影響とその評価
胎仔照射により生じた骨髄細胞の染色体異常は1週齢の時点ですでに消失している
*中野 美満子児玉 喜明大瀧 一夫中村 典
著者情報
キーワード: 放射線, 染色体異常, 胎児
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
目的:これまでのマウスを用いた実験から胎仔或いは新生仔照射で生じた多くの染色体異常は残りにくいことがわかった(20週齢で検査)。この結果は、胎仔あるいは新生仔では成体マウス照射の場合と比べて照射から検査までの経過時間が長いことにより異常細胞が淘汰されたためとも考えられた。そこで、照射から検査までの時間が転座頻度に影響するかどうかを調べた。 方法:胎仔(胎齢15.5日)では2 Gy のX線照射後2~10週(1~10週齢)、成体では照射後24~120時間と5~11週(15~19週齢)の期間について経時的に骨髄細胞における転座頻度を調べた。照射から染色体検査までの経過時間は胎仔と成体でほぼ同じである。1番(黄色)と3番染色体(赤色)を着色するFISHを行い、着色染色体の転座頻度を調べた。 結果:胎仔照射の場合は2~10週経過した検査で転座異常頻度の平均は0.7%であった。これは前回の胎仔照射後19~22週目で行った検査結果の平均頻度0.5%とほぼ同じであった。他方、成体マウスの照射の場合は照射後24~120時間および5~11週までの転座頻度は約3.4%であり、胎仔照射の場合と比べて明らかに高かった。 結論:胎仔照射の場合に染色体異常が残りにくいのは、照射から検査までの経過時間が成体と比べて長いためではなく、胎仔照射後2週目(生後1週齢)の骨髄細胞ですでに染色体異常の多くが消失していた。これは恐らく胎仔では、照射されたけれども運よく異常を生じなかった骨髄幹細胞に由来する細胞の活発な分裂によって異常を持っていた細胞が希釈されるためであろうと考えられた。
著者関連情報
© 2007 日本放射線影響学会
前の記事 次の記事
feedback
Top