日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: HP-264
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被ばく影響とその評価
旧ソ連核実験場近郊ドロン村から採取した土壌試料中129I汚染量の測定
*遠藤 暁富田 順平田中 憲一山本 政儀福谷 哲今中 哲二天野 光川村 秀久河村 日佐男星 正治
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抄録
旧ソ連核実験場セミパラチンスク核実験場(SNTS)では、1949年から1989年の間に大気、地上、地下核実験を450回以上に上り行ってきた。ドロン村はSNTSの境界から60kmに位置しており、1949年の最初に行われた旧ソ連核実験で放出された放射性雲が上空をとおり放射能によって汚染されたことで知られている。最近、健康調査の甲状腺検診において、SNTS近郊住民の甲状腺異常が報告されている。甲状腺異常は、131I放射能汚染と相関し、甲状腺線量を評価するために131I放射能汚染濃度を決定することが重要である。しかし、131I は半減期が短く(8.02d)、SNTSにおける評価では利用できなかった。近年、加速器質量分析法(AMS)が確立され、AMSを用いることにより、半減期長い(1.57x107y)放射性ヨウ素129I を測定することが可能である。本研究では、SNTS近郊ドロン村から採取した土壌サンプルを利用し、AMS測定で129I汚染量を評価した。 土壌の採取は、2005年に行った。1949年の最初の核実験において生成された放射性雲が通過したとされる軌跡と垂直に、およそ500m間隔で10kmにわたり土壌を21地点、ドロン村居住区において5地点で採取した。この26地点、78試料の試料をGe検出器により137Cs放射能の測定を行った。137Cs放射能測定後、AMS測定に利用する14試料を選んだ。14の土壌試料からヨウ素成分の抽出は九州環境管理協会において行い、AMS測定は日本原子力機構むつ事務所で行った。 129I /127I 原子比率は3.3x10-9から3.3x10-7の値が得られた。これらの値はヨーロッパにおける核実験や原子力産業からの寄与を含めた環境バックグラウンド(10-9-x10-7)と同程度であった。また、土壌中の129Iインベントリを決定したところ1.2x1013~1.5x1014(atoms/m2)が得られた。 チェルノブイリ原発事故由来の129Iと比較したところ、セミパラチンスク核実験場周辺のデータでは、129I濃度が異常に高い129I/137Cs(17-20)値が得られた。核実験由来の129Iのほかに原子力施設などからの129Iが影響していると考えられる。今後、コントロール地域などの測定を行っていく。
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© 2007 日本放射線影響学会
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