日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: W2R-325
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環境変異原によるDNA二重鎖切断は細胞死の過程か防御機構か
放射線照射後に長期間残存するリン酸化H2AXの生物学的意味
*吉川 智裕菓子野 元郎小野 公二渡邉 正己
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抄録
放射線被ばくによりDNA二重鎖切断が生ずると、クロマチンタンパク質のひとつであるH2AXが活性化ATMによりリン酸化され、フォーカスを形成することが知られている。同時に、DNA損傷修復経路、細胞周期チェックポイントの活性化が起こりDNA損傷の修復が進む。このDNA損傷修復の進行に伴いフォーカスの数は減少するので、H2AXのリン酸化は、DNA損傷修復と密接に関係する事象であると予想されるがその実際は明確ではない。その際、一部のフォーカスは、サイズが大きくなり長期間残存することが観察されるが、この大きなフォーカスの生成の生物学的な意義は明らかになってはいない。本研究では、放射線照射後に長期間残存するフォーカスと細胞生存率とが相関関係を持つのかどうかを調べた。 ヒト正常二倍体細胞HE49とヒト子宮頸部ガン細胞HeLaに0−6GyのX線を照射し、その後のリン酸化H2AXフォーカスの数と大きさの変化を調べた。またRPAをS期、メチル化ヒストンH3をG2期の指標とし、細胞周期とフォーカスの関係を調べた。 その結果、未照射の細胞および照射後に再増殖を始めた細胞では、大きなフォーカスを持つものがほとんど観察されないが、細胞周期の進行が抑制されたままの細胞に多く観察されることがわかった。 このことから残存する大きなリン酸化H2AXフォーカスの存在は、細胞が増殖能の喪失したことを示しており、放射線照射後の細胞の運命を考える上でのひとつの指標として有効なものになると考えられる。
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© 2007 日本放射線影響学会
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