日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: W2R-326
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環境変異原によるDNA二重鎖切断は細胞死の過程か防御機構か
放射光X線マイクロビーム照射された細胞核内のDNA損傷とRad51タンパク質の可視化
*宇佐美 徳子江口-笠井 清美森 雅彦小林 克己
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抄録
近年,低線量放射線影響発現のメカニズムを探るため,個々の細胞に個別に放射線を照射し,個別に追跡できるマイクロビーム細胞照射装置が世界中で建設され,生物実験が行なわれている. KEK放射光科学研究施設(フォトンファクトリー, PF)では,放射光を光源としたX線マイクロビーム細胞照射装置を開発し,共同利用に供している.この装置では,試料の直前に設置した四象限のスリットにより,マイクロビームのサイズを最小5μm角より任意に変えられるようになっている.このビームサイズは通常の培養細胞の細胞核より十分に小さく,個々の細胞を識別して照射できるだけでなく,細胞核の一部というような部位を特定した照射が可能になり,局所的にDNA損傷を誘発させ,それに伴う細胞応答を調べるといったアプローチが可能となった.
この装置を用いて,細胞核の一部にX線マイクロビームを照射し,そのときのDNA損傷の空間分布をγH2AXを指標として観測した.DNA損傷の大部分はX線を照射された領域に限定して生じていることを可視化することができた.次に, DNA二重鎖切断の主要な修復経路である相同組み換え(HR)に関与するRad51のGFP融合タンパク質をCHO細胞で発現させ,細胞核の一部にX線マイクロビームを照射した後のRad51タンパク質の挙動を観測した.照射後40分~1時間以内にGFP-Rad51のフォーカスが現れはじめ,5時間後まではかなりの数のフォーカスが残っていた.また,照射後12時間観測した後も全くフォーカスの現れない細胞もあり,このような細胞の割合は照射時におけるG1期の細胞の割合とほぼ等しかった.照射4時間後に細胞を固定し,γH2AX抗体による免疫染色を行なったところ,GFP-Rad51とγH2AXが共在していることが確認できた.
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© 2007 日本放射線影響学会
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