日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: W3-2
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放射線DNA損傷修復機構研究の最前線
放射線DNA損傷に対する53BP1依存性修復経路
*岩淵 邦芳橋本 光正松井 理内海 博司伊達 孝保
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キーワード: 53BP1, DNA損傷, 修復
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抄録
p53結合蛋白質として同定された53BP1は、DNA二重鎖切断部位に集積してフォーカスを形成する。siRNAを用いて動物細胞の53BP1をノックダウンさせる研究で、53BP1がDNA損傷に対するintra-S期、G2/M期チェックポイントに関与することが示されたが、DNA損傷修復における53BP1の機能については不明な点が多い。我々は、ニワトリDT40細胞を用いて53BP1の機能解析を行なってきた。G1期に同調させた細胞にX線照射を行なった場合、53BP1遺伝子欠損細胞はX線高感受性を示した。この表現型は、Ku70、DNA ligase IV、Artemisなどの非相同末端結合修復(NHEJ)蛋白の遺伝子欠損細胞に特徴的である。そこでG1期細胞のX線感受性を指標に、これらの遺伝子とのエピスターシス解析を行なったところ、G1期細胞に生じたX線誘発DNA損傷に対しては、1) Ku/DNA-PKを介したcore NHEJ経路 2) ATM/Artemisを介したArtemis依存性経路 3) 53BP1を介した53BP1依存性経路、4) DNA ligase IV非依存性経路の4経路が存在することが明らかになった。特に53BP1依存性経路は、core NHEJ経路、Artemis依存性経路と異なり、PI-3キナーゼ阻害剤Wortmannin抵抗性であった。さらに、53BP1がcore NHEJ経路とは異なった修復経路を形成することは、細胞周期非同調細胞への低線量率X線照射の実験からも示された。すなわち、低線量率照射(0.3あるいは0.5Gy/day)でのX線感受性を調べたところ、Ku70/53BP1両遺伝子欠損細胞は、Ku70遺伝子欠損細胞より高感受性であった。X線誘発DNA損傷に対する53BP1依存性修復経路について紹介する。
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© 2007 日本放射線影響学会
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