日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: W3-3
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放射線DNA損傷修復機構研究の最前線
DNA二重鎖切断損傷におけるNBS1とヒストンH2AXの役割
*小林 純也坂本 修一飯島 健太森島 賢一中村 恭介松浦 伸也田内 広小松 賢志
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抄録
 ナイミーヘン症候群(NBS)は、毛細血管拡張性運動失調症(AT)と放射線高感受性、染色体不安定性、放射線抵抗性DNA合成などの細胞表現型が非常に類似していることで知られている。近年の研究から、NBSの原因遺伝子産物NBS1は、ATの原因遺伝子産物ATMと結合し、ATMのDNA二重鎖切断(DSB)部位へのリクルートメント、活性化に機能することが報告され、NBS1がATMを介して細胞周期チェックポイント制御に関与することが知られている。また、我々は以前、NBS1がDSB損傷にともない、リン酸化型ヒストンH2AX (γ-H2AX)と結合し、DSB部位へとリクルートメントされることを報告した。これらの結果から、NBS1はATM, H2AXとの結合を通して、DNA損傷応答に広範に機能することが考えられたので、DSB修復におけるこれらの相互作用について検討を行った。   NBS1はN末領域にBRCT, FHAドメイン、中央部にATMによるリン酸化部位、C末領域にMRE11結合部位、ATM結合部位を持つことから、これらの部位の相同組み換え(HR)修復における役割を検討した。BRCT、FHA、MRE11結合領域への変異導入はHR活性を低下させたが、ATMリン酸化部位、ATM結合部位の変異では影響が見られなかった。また、ATMが欠損したAT細胞でもHR活性が正常であったことから、ATMは HR修復においてNBS1と相互作用しないと考えられる。BRCT/FHAドメインにはヒストンH2AXが結合するが、H2AXノックアウト細胞でもHR活性は低下していた。また、H2AXのN末端のアセチル化部位に変異を導入すると、DSB依存的なフォーカス形成が抑制されるとともにHR活性の低下も見られた。また、H2AXと共通のH2Aのアセチル化を阻害剤で抑制すると、フォーカス形成及びHR活性が低下した。以上の結果から、相同組み換え修復においてはNBS1とH2AXの相互作用が示唆されるとともに、ヒストンH2Aのアセチル化も関与することが考えられる。
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© 2007 日本放射線影響学会
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