日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第50回大会
セッションID: W3R-331
会議情報

放射線DNA損傷修復機構研究の最前線
RAD51核内ドメインの多様性
*鈴木 秀和島 弘季田代 聡
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
細胞核内には、転写,複製,修復などの核機能と密接に係わっているさまざまな蛋白質が形成する非クロマチン核内ドメインと呼ばれる高次構造体が存在することが明らかになってきた。ゲノム修復では、特にDNA二本鎖切断の相同組換え修復機構に関与する蛋白質の一部が放射線照射によるゲノム損傷誘導後に核内で高次構造体(放射線誘発核内ドメイン)を形成することが知られている。RAD51は、酵母からヒトまで保存されたDNA二本鎖切断修復の中でも相同組換え修復機構で中心的な役割を果たしているタンパク質である。RAD51は放射線照射などによるゲノム損傷誘導後に核内ドメインを形成し、RAD51核内ドメインを持つ細胞の割合、および細胞あたりのRAD51核内ドメインの数が放射線照射後に増加することが知られていた。我々は、RAD51がヒトリンパ球でS期特異的に核内ドメインを形成すること、ゲノム損傷部位に集積することを明らかにしてきた。
今回、我々はRAD51核内ドメインの生物学的意義を詳細に検討するため、マルチカラー免疫蛍光抗体法を用いて放射線照射後のRAD51核内ドメイン構成因子の変化を解析した。その結果、放射線照射後にもゲノム損傷非依存的に形成されるRAD51核内ドメインが存在すること、放射線照射直後からユビキチン化タンパク質がRAD51核内ドメインに集積すること、脱ユビキチン化酵素と相互作用する53BP1がゲノム修復後期にRAD51核内ドメインと共局在すること、が明らかになった。これらの結果から、RAD51は放射線照射後に多彩な核内ドメインを形成することが示唆された。RAD51核内ドメインの解析結果から得られた知見をもとに、ゲノム損傷応答と非クロマチン核内ドメインのダイナミクスに関して討論する。
著者関連情報
© 2007 日本放射線影響学会
前の記事 次の記事
feedback
Top