日本臨床救急医学会雑誌
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症例・事例報告
初療室で緊急手術を行った側腹部杙創の1例
田中 保平伊澤 祥光渡邊 伸貴新庄 貴文松村 福広米川 力窪木 大悟遠藤 和洋間藤 卓
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キーワード: 外傷, 肝損傷, 穿通創
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2021 年 24 巻 4 号 p. 583-587

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抄録

35歳,男性。約3mの屋根から墜落し,4×4×80(cm)のアルミ角材が右側腹部に刺入した。呼吸循環動態は安定していたが,創部から持続的な出血を認めた。角材が大きく術前にCT施行できず,やむを得ず単純撮影の情報のみで緊急手術とした。腹部正中切開で開腹したところ,腹壁貫通創と外側区域の肝損傷(日本外傷学会分類Ⅱ型)を認めた。止血は得られていたので腹腔内の観察・洗浄と刺入部の縫合のみ行い腹部開放管理,翌日に止血を確認後閉腹,経過良好で第11日病日退院とした。杙創は高所墜落や転倒による殿部への体幹垂直方向の受傷が多く,体幹側方からは少数である。刺入物を抜去せず搬送されることが多く,その大きさや性状によりCT撮影が困難もしくは不可能な場合がある。体幹側方の場合はその可能性が高まる。手術には万全の体制で臨むとともに,平時より外傷手術のシミュレーションなどを活用して緊急開腹手術のトレーニングや研修を積む重要性を再認識した。

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© 2021 日本臨床救急医学会
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