日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: DP-2
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低線量・低線量率
低線量率γ線連続照射マウス脾細胞の転座型染色体異常頻度の線量効果
*香田 淳豊川 拓応一戸 一晃小木曽 洋一田中 公夫
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キーワード: 低線量率, 染色体異常, M-FISH
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抄録
高線量放射線により生じた転座型染色体異常は、線量依存的に出現し、被ばく後長期間を経てもリンパ球や骨髄細胞に残存することがわかっている。低線量率放射線長期被ばくの場合でも、転座型染色体異常頻度が集積線量(被ばく時間)の増加とともに増え、残存するか否かについて検討するため、低線量率放射線で長期連続照射したマウス脾細胞の染色体異常頻度と集積線量との関係を調べた。SPF条件下で、C3H/HeN雌マウスを8週齢より低線量率(20 mGy/22 hr/day)137Csγ線で最大約400日間連続照射した。集積線量が500、1000、 2000、 4000、 6000、 8000 mGyに達した時点でマウス脾細胞を、LPS、ConA、2-ME存在下で48時間培養し、染色体標本を作製した。転座型異常の解析は、20対のマウス全染色体を染め分けることのできるMultiplex-Fluorescence in situ hybridization(M-FISH)法により行った。非照射マウスは、8週齢より約400日後まで経時的に観察したが、加齢に伴う転座型異常の増加は、殆んどみられなかった。一方、照射マウスでは、転座型染色体異常の頻度は集積線量に依存して、8000 mGyまでほぼ直線的に増加した。また同じ染色体異常を持つ細胞が3個以上みられる、いわゆるクローンが4000 mGyから出現し始め、6000 mGy以上で急増した。低線量率(20 mGy/22 hr/day)放射線を連続照射したマウス脾細胞中のリンパ球の転座型等の染色体異常頻度を高線量率(890 mGy/min)照射マウスの異常頻度と同一線量(500 mGy)で比較し、高線量率照射/低線量率連続照射で生ずる染色体異常頻度の比〔線量・線量率効果係数(DDREF)に相当〕を求めたところ、染色体異常の型により異なるが2.6から4.1の値が得られた。これらの成果は、低線量放射線の発がんリスク評価上重要な知見である。本研究は青森県からの受託事業により得られた成果の一部である。
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© 2008 日本放射線影響学会
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