日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: DP-8
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低線量・低線量率
長期低線量率照射したヒト早発性老化症候群モデルマウスの寿命延長効果の解明
*野村 崇治
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抄録
これまで当所はマウスに低線量率ガンマ線(0.63 mGy/h)照射を行うと、種々の臓器で抗酸化機能が亢進することを明らかにした。また当所は、II型糖尿病モデルマウスやヒト早発性老化症候群モデルマウス(klotho)マウスにおいて、長期間連続した低線量率の照射を行うと、顕著に寿命延長効果が生じることも見出した。寿命延長効果の成因には、抗酸化機能の亢進やインスリン抵抗性の亢進など様々な報告が挙げられている。また近年老化を制御するklotho遺伝子が見出され、この遺伝子の変異でカルシウム代謝の破綻が生じ老化に関係する症状が引き起こされるとの報告もある。これらの報告から今回、低線量率照射による寿命延長効果との関連を調べるため初期的な解析として抗酸化機能の変動とカルシウム代謝に着目した。klothoマウス(メス)を用いて肝臓の抗酸化機能の変動、および血中カルシウム量の変動を測定した。線源に137-Cs(314GBq)のガンマ線を用いた。28日齢より0.63 mGy/hrの線量率で連続照射を行った。
照射により肝臓のCAT活性やSOD活性は増強する傾向が示された。照射群の抗酸化活性の非照射対照群に対する比の総和で比較すると、その値は高値で推移し照射による明らかな効果が生じた。しかし酸化的損傷の指標である過酸化脂質量では明瞭な効果が認められなかった。次にカルシウム量を測定すると、照射群では非照射群より低い値となった。
klothoマウスの寿命延長効果は、抗酸化機能の亢進とカルシウム代謝に関する機能の制御による効果が関与すると推察した。
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© 2008 日本放射線影響学会
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