日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: FO-2-4
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被ばく影響・疫学
高密度マイクロアレイCGH法を用いたマウス欠失突然変異の解析
*浅川 順一小平 美江子高畠 貴志柿沼 志津子島田 義也
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抄録
X線照射したオスの精原細胞に由来する仔マウス506匹について、DNA2次元電気泳動法でスクリーニングし20匹のマウスに16例の突然変異を検出した(浅川ら, Rad. Res., 2004)。突然変異の観察されたNotI断片を正常DNAよりクローニングし、個々の突然変異の種類を分子レベルで調べた。サザンブロット法と定量PCR法で解析した結果、5例は欠失型突然変異であり、少なくとも25 kb以上の大きさであると推定された(対照群190匹中に1例:C1、照射群316匹中に4例:E1~E4)。今回マイクロアレイCGH法を用いて欠失領域のより詳細な解析を行った。カスタムアレイ(アジレント社)はそれぞれ突然変異の生じたNotI部位を中心とする約1 Mbの領域に平均0.3 kbの間隔で選んだオリゴプローブを配置し、約44,000個を1枚のスライドガラスに4ヶ所貼り付けた。アレイCGH法では検査対象DNAとリファレンスDNAが必要であるが、今回の実験では、対照群で見つけた突然変異マウス(C1)のDNAをリファレンスDNAとして用いた。5例の遺伝子欠失の大きさは、C1:61 kb、E1:655 kb以上、E2:690 kb以上、E3:30 kb、E4:360 kbと推定された。E1、E2、E4では欠失は数100 kb以上の領域に及んでいるが、遺伝子と推定される配列は含まれていなかった。一方、欠失サイズが比較的小さなもの(C1, E3)では、欠失領域の近傍に遺伝子と推定される塩基配列が多数存在している。欠失領域に重要な遺伝子が存在する場合には、欠失の大きさに関係なく突然変異個体は生まれてこない、あるいは生まれても正常には育たないと考えられる。高密度マイクロアレイCGH法はゲノム中のコピー数変異を高解像度で解析でき、数10 kbといった比較的小さな欠失突然変異も検出できることが分かった。
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© 2008 日本放射線影響学会
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