抄録
白血病は、原爆被爆者に放射線の影響が最初に観察された悪性腫瘍で、悪性腫瘍の中でも最も高い相対リスクを示すものである。 相対リスクは被爆後の時間とともに減少し、その減少度は若年被爆者の方が高年被爆者よりも大きかった。 被爆50年後においても白血病リスクの上昇があるか否かを検討するのは興味深い。 本報告では放射線影響研究所(放影研)の寿命調査(LSS)集団中のDS02線量を有する約87,000名における1950-2003年間の白血病死亡率リスクの経年変化を観察した。
調査期間中の白血病死亡数は318で、全期間の過剰相対リスク(ERR/Gy)は 4.3 (95% CI; 3.1, 5.8)であった。 1996-2003年のERR/Gyは3.0 (95% CI; 1.1, 6.7)で統計的に有意 (p<0.001)であり、被爆50年後においても白血病のリスクは消失していないことを示唆していた。 白血病の過剰死亡のほとんどは被爆後早い時期に起こったが、最近、再びリスクの上昇傾向が観察された。 最近のリスクは被爆時年齢が20歳未満群によるもので、この群は初期に急激に白血病リスクが減少した群である。
白血病死亡の大半は急性骨髄性白血病 (AML)であるので、本報告で観察されたリスクパターンはAML死亡リスクのパターンを反映していると思われる。若年被爆者の初期の白血病リスクは主に急性リンパ性白血病 (ALL)によるものであったが、最近のこの群におけるリスクはAMLなど他の病型の白血病による可能性がある。 放影研では追跡調査を継続し、白血病の病型別の詳細な解析を行う予定である。