日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: W2-4
会議情報

DNA損傷チェックポイントの真の生物学的意義とは
複製フォーク進行阻害により誘導されるDNA2重鎖切断の生成機構とその修復
*志村 勉桑原  義和福本  学アラジャム ミリット
著者情報
会議録・要旨集 フリー

詳細
抄録
放射線や化学物質等の被ばくによるDNA損傷はDNA複製の開始や複製フォークの進行を抑制し、DNA合成を阻害する。複製フォークの進行の停止によりDNA2重鎖切断(以下2重鎖切断)が誘導されることが知られているが、その生成機構や役割は明らかでない。我々はDNA合成酵素の阻害剤アフィジコリン(以下APH)を用い、DNA複製依存性の2重鎖切断の生成機構について解析を行なった。 DNAヘリケースBLM欠損細胞とDNA切断酵素Mus81欠損細胞ではAPH処理による2重鎖切断が観察されず、複製フォークが完全に停止した。一方、BLM、Mus81が正常な細胞では APHにより2重鎖切断が誘導された後、DNA-PKによる非相同末端結合(NHEJ)修復により速やかに修復されることで、複製フォークの進行が再開されることを明らかにした。この経路にChk1は必要とせず、チェックポイント非依存性の機構である。以上の結果より、DNA複製依存性の2重鎖切断は、複製フォーク停止を解除する過程で必要であり、一過性に形成され、その形成にBLM、Mus81が関与していることを明らかにした。これまで、DNA複製時の損傷にはチェックポイント依存性の組み換え修復によって修復されると考えられていた。しかし、素早い修復にはチェックポイント非依存性のNHEJ経路が働き、組み換え修復を活性化する前に損傷を修復すると考えられる。このことからチェックポイント機構は、損傷の量が多くNHEJ経路ではDNA損傷が修復出来ない場合に、もう一つの組み換え修復経路を活性化するための機構であると示唆される。
著者関連情報
© 2008 日本放射線影響学会
前の記事 次の記事
feedback
Top