日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第51回大会
セッションID: W2-5
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DNA損傷チェックポイントの真の生物学的意義とは
初期胚におけるDNA損傷チェックポイントの意義
*丹羽 太貫
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キーワード: マウス初期胚, 損傷応答, p21
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抄録
外的ストレス、とりわけDNA損傷に対する生命の戦略は、生物種によって様々なものがみられる。多細胞生物においては、個体の組織や細胞の種類により、さらに脊椎動物などでは発生の段階によっても、損傷に対する戦略が異なる。この戦略の一つであるDNA損傷チェックポイントにも生命の戦略が反映されており、細胞が果たすべき役割とその細胞がどのような状況において損傷への対応を迫られているかによって、チェックポイントの在り方が異なる。たとえばDNA損傷チェックポイントは修復のための待ち時間稼ぎと考えられているが、この考え方は一般的な細胞において基本的に正し戦略と思える。DNA損傷修復には多様な側面があり、単に損傷を修復するのみならず、間違いの頻度を調整する機能もあり、条件によっては間違いを気にすることなく修復のみを行うという場合がある。実際にチェックポイントに異常をもつ細胞では、染色体異常やゲノム突然変異の頻度が高まる。しかしこのような突然変異の高まりはかならずしも細胞の生死でみた放射線感受性とは関係がない。本講演では、マウス初期胚を例にして、細胞が状況に応じてDNA損傷修復、突然変異、チェックポイントのそれぞれの特性を使い分けている状況を紹介したい。そしてこれを通してDNA損傷チェックポイントの生物学的意義について論じたい。
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© 2008 日本放射線影響学会
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