日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: P1-40
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突然変異ほか
マウス脾臓リンパ球での放射線誘発Aprt突然変異生成の年齢依存性
*越 浩一山内 一己江刺 達也柿沼 志津子島田 義也立花 章
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キーワード: 突然変異, Aprt, 年齢依存性
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抄録
マウスを用いた実験発がんの結果から、照射時年齢によって発がん頻度が異なることが報告されている。発がん過程には遺伝子突然変異が関与しているとされているため、発がんの照射時年齢依存性が生じる原因の一つとして、放射線誘発突然変異生成頻度が年齢によって異なるという可能性が考えられる。この点を明らかにするために、週齢の異なるマウスにX線を照射し、体細胞突然変異の頻度を検討した。突然変異頻度を検出するマーカーとして、アデニンフォスフォリボシルトランスフェラーゼ(APRT)をコードするAprt遺伝子を用いた。Aprt遺伝子はマウス8番染色体上にあるため、常染色体上の遺伝子に生じる突然変異を解析するのに適しているが、両方の対立遺伝子が正常ホモの場合にはAPRT欠損突然変異頻度は非常に低いため、一方の対立遺伝子を予め遺伝子破壊により機能を欠損させ、正常対立遺伝子を1個だけ持つヘテロ接合体を作成し、実験に用いた。このようなAprtヘテロ接合性マウスの1週齢あるいは7週齢の時にX線を照射し、照射後8週目に脾臓を摘出し、リンパ球を分離して、コンカナバリンAと組換えIL-2を加えた培地でTリンパ球を培養し、これに8アザアデニンを加えることによって、APRT欠損突然変異体を選択した。X線照射は、1Gy1回照射、4Gy1回照射、1Gy4回照射、で行った。また、雄と雌とを分けて解析し、性差についても検討した。突然変異頻度は、個々の照射条件によって少しずつ傾向が異なるため、一概に言えないが、1週齢で照射したマウスの方がX線照射によって突然変異頻度の明らかな上昇が観察され、7週齢照射マウスでは突然変異頻度の上昇はほとんど見られなかった。これらのことは、若齢期照射の方が放射線誘発突然変異生成に感受性が高いことを示唆しているものと考えられ、放射線誘発がんの年齢依存性に何らかの関与をしているのではないかと推測される。
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© 2009 日本放射線影響学会
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