日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: P2-81
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放射線応答・シグナル伝達
hTERT 遺伝子を導入したマウス不死化神経幹細胞の放射線感受性
*白石 一乗朝日 菜都美原 正之石崎 寛治児玉 靖司
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抄録
目的:幹細胞とは未分化な状態を保ったまま複製する能力を維持しており、かつ必要な刺激によって適当な方向に分化する能力を持った細胞と定義される。近年、がん細胞が幹細胞あるいは未熟な前駆体細胞を起源とする考え(がん幹細胞起源説)が示されてきた。また、iPS 細胞を代表とする再生医療応用にも幹細胞は注目されている。一方で、幹細胞を in vitro で維持することの難しさから、その放射線応答機構は明らかにされていない。我々は、neurosphere 法の導入によって、神経幹細胞(前駆体細胞も含む)を in vitro で培養することを可能とした。本研究ではneurosphere 法によって得られた神経幹細胞にヒトテロメラーゼ触媒サブユニット(hTERT)遺伝子を導入することで安定した神経幹細胞株を樹立し、幹細胞の放射線感受性を明らかにすることを目的とした。
方法:14.5日齢ICRマウス胎児の線条体組織から神経幹細胞を含む neurosphere を調整した。この細胞に hTERT 遺伝子をレトロウィルスベクターにより導入した。導入後細胞のテロメラーゼ遺伝子の発現と活性は、それぞれPCR および ELISA 法により調べた。また、放射線感受性は軟寒天コロニー形成法により測定した。
結果:hTERT 導入細胞は PCR によって導入が確認された。また、テロメア伸張活性は導入前細胞、マウス繊維芽細胞に比較して上昇していた。この細胞株は、1% 血清刺激による分化誘導後にグリア細胞に分化することが確かめられた。現在、この細胞株の連続継代培養を行い、安定株を維持できるか否か検討中である。我々は、軟寒天コロニー形成法を用いた放射線感受性試験により、マウス初代神経幹細胞、およびp53欠損株、ATM 欠損株での放射線感受性を調べるとともに、hTERT 導入不死化神経幹細胞の放射線感受性も調べたので報告する。不死化神経幹細胞株による放射線応答の知見は発がん機構における幹細胞の役割や再生医療における幹細胞利用のリスク評価に貢献すると考えられる。
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© 2009 日本放射線影響学会
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