日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: P2-108
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非電離放射線
温熱・Tempo併用はU937細胞アポトーシスとオートファジー細胞死を増強する
*趙 慶利藤原 美定近藤 隆
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キーワード: 温熱, Tempo, オートファジー
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抄録
[目的]温熱ストレス(44°C/30分)あるいはSOD作用をもつニトロキシドTempo(10 mM)はアポトーシスを誘導する。両者の併用はU937細胞の温熱アポトーシスを不可逆な非アポトーシス細胞死にスイッチする。この細胞死変換メカニズムの解明が目的。
[方法] ヒト白血病細胞株U937細胞において、温熱とTempoの単独と併用による細胞死、tBid/Bax活性化、cytochrome c (Cytc) 遊離、caspasesの活性化、autophagy、ROS, permeability transition pore (PTP)などの検出と定量解析。
[結果・考察] U937細胞では44°C/30分ストレスはinitiator caspases-2, -8, -9およびcaspase-3の活性化によるアポトーシスを高率に起こした。10 mM Tempo+44°C/30 分併用はtBid/Bax活性化によるCytc遊離を起こしたにも拘わらず、温熱アポトーシスをcaspase非依存性のオートファジー細胞死に変換した。その基本機構は、併用10 mM TempoのSOD様作用中に生じる、強い酸化能をもつ中間体oxo-ammoniumがすべてのcaspasesに共通な活性化部位CysSHを酸化不活性することであると考えられた。温熱・Tempo併用によるオートファジー誘導はBNIP3Lのミトコンドリアにおける発現、内膜透過性(PTP)の亢進とミトコンドリアの深刻な機能低下によると考えられた。アポトーシスを伴わないオートファジー細胞はPI陽性のネクローシス細胞死をたどり、完全に細胞増殖を抑制した。ミトコンドリアのカルシウムの取込を抑制するRuthemium redとBAPTA、あるいはcyclophilin Dと結合するcyclosporin Aはいずれもオートファジー細胞のネクローシス細胞死へ変換を促進した。一方、5 mM Tempo-44°C/10 分併用および44°C/30 分単独処理は典型的なtBid/Bax依存—caspase依存性アポトーシスをおこした。したがって、Tempoはユニークな温熱増感剤としてアポトーシスおよびオートファジー細胞死を増強する活性をもつ。
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© 2009 日本放射線影響学会
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