抄録
近年、我が国でも電磁界と健康について研究が進められている。このような中、中間周波数帯(IF)電磁界の曝露に関しても、その生体影響について議論され始めている。低周波や高周波帯電磁界の生体影響研究は活発に行われてきているが、中間周波数帯電磁界については研究が極めて少ない。しかしながら、現在IF領域を用いた装置は、広く普及しているので、健康への影響を評価することは重要である。
我々は既に磁束密度532μTrms(国際非電離放射線防護委員会ガイドラインの85倍)、2時間曝露で細胞の遺伝毒性に与える影響がないことを報告している[1]。本研究では中間周波数帯電磁界の生物学的影響評価の一環として、高磁束密度6 mTrms(国際非電離放射線防護委員会ガイドラインの960倍)曝露による熱ショックタンパク質(Hsp27、リン酸化Hsp27、Hsp70)の発現について解析・評価をした。
ウエスタンブロッティング法により評価した熱ショックタンパク質の発現量は、中間周波高磁界曝露群とsham群に統計的な有意差は認められなかった。蛍光免疫染色法においても評価した熱ショックタンパク質に関して、曝露群に核移行および発現量の変化は認められなかった。一方、蛍光免疫染色法により陽性対照の温熱処理で、熱ショック蛋白質の核移行が確認された。
以上の結果より、磁束密度6 mTrmsでの中間周波数帯電磁界曝露で、検討した熱ショックタンパク質発現に関して影響はないものと考えられる。今後、他の細胞機能に対する影響の可能性や磁束密度、曝露時間の異なる中間周波数帯電磁界の細胞影響について、さらに研究を進める予定である。
<参考文献>
[1] Miyakoshi J, Horiuchi E, Nakahara T, Sakurai T. 2007. Bioelectromagnetics. 28: 529-537.