抄録
[背景]紫外線はゲノムにシクロブタン型ピリミジンダイマーなどの有害なDNA損傷を与える。DNA損傷への防御策の1つとしてtranslesion DNA synthesis(TLS)がある。色素性乾皮症(XP)バリアント群(XPV)はTLS特異的DNA polymeraseの1つPol.η (遺伝子Polh)を欠損する。本研究ではPolh欠損マウスを用いUVBゲノム毒性に対する皮膚の防衛反応におけるPol.ηの役割解明を試みた。[方法]大腸菌のlacZ遺伝子を組み込んだTgマウスMutaマウスを用い、Polh-/-の遺伝子型をもつMutaマウスの皮膚に紫外線UVB(280~320 nm)(東芝FL20S.Eランプ)を0~1 kJ/m2照射した。照射4週間後に皮膚を採取し、表皮・真皮に分離後、ゲノムDNAを抽出した。in vitro packagingによるlacZトランスジーン回収の後、大腸菌を用いたP-gal positive selectionによりlacZの突然変異頻度(mutant frequency; MF)を評価し、また、DNA sequencingにより塩基配列変化を検出し突然変異スペクトルを解析した。[結果]表皮と真皮の両方において紫外線照射により突然変異が誘発された。表皮においては0.3 kJ/m2まで線量依存的にMFは上昇し、その後は線量が強くなってもMFは飽和状態となり一定となった。真皮では1 kJ/m2照射までMFは線量依存的に上昇した。MFは野生型(WT)に比べて高い値を示し、1 kJ/m2では表皮・真皮ともにWTの約4倍のMFを示した。また、1 kJ/m2までの照射で誘発されるMFの最高値は表皮の方が真皮より高く約2倍である。更に、MFが最高値を示した0.3 kJ/m2 UVB照射表皮のmutant cloneのDNA塩基配列を解析し、得られた変異スペクトルについても発表する予定である。