抄録
UNSCEAR 2006年報告書は2巻に分かれており、第2巻に非標的効果、免疫系への影響、ラドンに関するレビューがまとめられている。シンポジウムでは、これらの研究領域の研究動向をUNSCEAR報告書から拾い上げ、今後の発展方向に関して紹介する予定である。これまで放射線の生物効果は、放射線のエネルギーが標的細胞の核に沈着することにより、細胞死や突然変異が引き起こされると考えられてきた。放射線の非標的効果は、核以外の細胞部分あるいは近隣の細胞への照射によっても突然変異や細胞死が起きることを示している。生体内でも非標的効果が有効に働いているのなら、高LET放射線影響、低線量あるいは低線量率の被ばくリスクを考える上でパラダイムシフトを余儀なくさせる可能性を秘めている。放射線の免疫系への影響に関しては、免疫学のめざましい進歩と新たな解析手法が放射線影響研究の分野にも導入されつつある。また、ラドンの影響に関しては、屋内ラドンと肺がんの症例対象研究およびそれらのプール解析結果がレビューされており、シンポジウムでも取り上げる。