日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: S2-1
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放射線影響研究分野における国際的情報発信:UNSCEARの重要性
UNSCEAR2006年報告書にみる放射線影響研究1(がん、非がん疾患の疫学)
*児玉 和紀
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抄録
UNSCEAR2006報告書で述べられている「放射線とがん、非がん疾患のリスク」の概要については、日本放射線影響学会第50回大会での公開講座において報告した。そこで今回は、UNSCEAR2006報告書におけるわが国の疫学研究の貢献について報告する。
放射線と発がんリスク:
わが国の疫学研究で最も広く活用されているものは、これまでと同様に、放射線影響研究所(放影研)で長期間実施されている寿命調査である。部位別がんリスク評価においてはほぼ全部位で最初に引用されている。特に性別・被爆時年齢別のリスク評価は他の疫学調査では困難なこともあり、貴重な情報を提供し続けている。また、寿命調査で観察された線量反応が低線量被ばくリスク推定の根拠のひとつとしても用いられている。更に、特殊な被ばくとして、胎内被爆者調査結果も引用されている。
以上の他に、わが国の疫学研究として、職業被ばくでは、放射線影響協会(放影協)で実施されている放射線業務従事者の追跡調査、放射線医学総合研究所(放医研)で実施されてきた放射線技師の追跡調査が引用されている。医療被ばくでは、トロトラスト患者の調査が引用されている。
更に、国内での研究ではないものの、わが国の疫学者が共同研究者として関与している研究として、中国のハイバックグラウンド地域における研究や、マーシャル群島における住民調査も引用されている。
放射線と発がんリスク評価においては、寿命調査が今後とも重要な役割を果たし続けていくとは思われるものの、職業被ばくなどのような低線量反復被ばくのリスクについて直接情報を提供することはできない。わが国においても、低線量反復被ばくリスクに関する疫学調査の拡充が望まれる。
放射線と非がん疾患リスク(循環器疾患リスク):
わが国の疫学研究で最も広く活用されているものは、放影研寿命調査である。同じく放影研の成人健康調査も、死亡調査の欠点を補完する形で引用されている。
以上のほかに、職業被ばくでは、放影協の原発従業員の追跡調査、放医研の放射線技師の追跡調査も引用されている。
これまで放射線リスク研究が発がんに主眼を置いてきたこともあり、非がん研究は質的にも量的にも不足している。この領域の研究も今後の拡充が望まれる。
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© 2009 日本放射線影響学会
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