日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: W1-2
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若手放射線生物学研究会企画 広島で放射線発がんを考える
放射線発がんの被ばく時年齢依存性:実験動物乳がんモデルを中心に
*今岡 達彦西村 まゆみ飯塚 大輔臺野 和広西村 由希子奥谷 倫未柿沼 志津子島田 義也
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抄録
放射線被ばくは、ヒト乳がんのリスク要因のうちでも、因果関係が疫学的に確立している数少ない環境要因のひとつである。特に若年での被ばくによる乳がんリスクの高低は、長年議論されてきた。ラットの乳がんは病理組織学的にヒト乳がんとの共通点を多く有する良いモデルである。本発表では、主にラット乳がんに注目し、研究の先行している化学発がんの知見を参照しつつ、放射線発がんにおける被ばく時年齢依存性の現象を紹介し、そのメカニズムを考察したい。
化学発がんの実験から、乳腺の成長過程の一定の時期に発がん物質への感受性の高いウィンドウが存在し、これは化学物質の種類に依存することが知られている。これらは乳腺の分化状態、化学物質の代謝活性化能力、および損傷修復能力の年齢変化によって説明されている。一方、放射線発がんの実験では、幼若期の被ばくによる感受性は低く、むしろ成体期の被ばくによる感受性が高い。我々は、幼若期の被ばくが卵巣を著しく損傷することと、誘発される乳がんがホルモン受容体陰性であることの関連を見出し、幼若期の被ばくによって卵巣機能が低下するために乳がんが発生しにくくなると考えている。
また、化学発がんの感受性のウィンドウの時期が、乳管先端部の未分化細胞の増殖活性が高い時期と重なること等から、発がん物質はこれらの未分化細胞を標的としていると考えられてきた。このことは放射線発がんの実験系でも一部あてはまるものの、その他の細胞が標的となっている証拠もある。その他、誘発腫瘍に見られる遺伝子レベルの異常などから推察される放射線発がんメカニズムについても紹介したい。
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© 2009 日本放射線影響学会
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