日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: W5-3
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紫外線DNA損傷の修復欠損遺伝病とその分子病態
コケイン症候群の発症と変異型CSB蛋白質の機能
*堀端 克良本間 正充田中 亀代次
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抄録
コケイン症候群(CS)は劣性遺伝性疾患であり、日光高感受性に加え、著しい発育異常、早老症、進行性の神経変性、運動失調を示し、ほとんどが10歳までに死亡する。一方で、劣性遺伝性疾患である紫外線高感受性症候群(UVsS)は日光に高感受性を示すのみであり、早老症や神経症状等は一切見られない。CSの原因遺伝子はCSAおよびCSB遺伝子である。我々は以前にUVsSの原因遺伝子がCSB遺伝子であることを明らかにしたが、原因遺伝子が同一であるにも関わらず、臨床症状が全く異なる原因は不明であった。この原因を突き止めることで、CS-B患者でみられる重篤な臨床症状の発症機構を解明することができると考え、詳細に解析した結果、1)一例を除く全てのCS-Bでは突然変異部位に関わらず、共通する分子量の変異型CSB蛋白質(p150)が発現しているが、UVsSでは全くCSB蛋白質が発現していないこと、2)一例のCS-Bでは突然変異部位に応じた分子量の変異型CSB蛋白質が発現していること、3)ヒトCSB遺伝子上のエキソン5と6の間にトランスポゾンPGBD3が挿入されており、CSB遺伝子座位からは正常CSB蛋白質に加え、PGBD3がエキソンとして認識された結果生じる CSB/PGBD3融合蛋白質、の2種の遺伝子産物が発現しており、CS-Bで見られたp150 はこの融合蛋白質であること、4)一例のCS-BではPGBD3より上流にナンセンス変異をもつが、PGBD3が存在することでnonsense-mediated mRNA decayによる変異型CSBmRNAの分解を回避し、変異型CSB蛋白質が安定化すること、5)正常CSB、p150および変異型CSB蛋白質は共にDNA topoisomerase I(Top1)を含む蛋白質と複合体を形成し、Top1の酵素反応に影響を及ぼしていること、を明らかにした。このことから、CS-B患者で見られる神経変性や運動失調などの重篤な病態は、Top1を介在することが原因となっている可能性を指摘した。
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© 2009 日本放射線影響学会
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