抄録
土壌 · 気象観測データと現地画像をリンクした農地 ICT モニタリングの有効性を,高冷地キャベツ栽
培畑における水循環の把握を事例として検証した.このモニタリングはフィールドサーバーと Decagon
Devices 製のセンサおよびデータロガーを用いて夏季と冬季に分けて行われた.その結果,対象畑の表層土壌では栽培期間を通して高水分が維持されていることがわかった.これは硬盤層の存在と蒸発散量を大きく上回る雨量に起因していた.また降雨に伴う土壌中の溶質の移動も確認できた.現地画像によってキャベツの生長,降雨に伴う地表面流,積雪とその融解などが視覚的に把握できた.また土壌 · 気象データとリンクさせることで,従来の数値データのみでは理解できなかった現象の解釈が可能となり,より合理性の高い考察ができた.例えば冬季の地温と体積含水率が積雪と融雪に伴い異なる日変動を示すことは現地画像がなければ解明できなかった.このように本研究により,ICT を用いた農地モニタリングは従来の測定に対し,現場をより詳細に包括的に把握できる有効なツールであることが実証された.