抄録
p53は細胞周期停止、DNA修復、アポトーシス、さらにp53自身の分解に関与する遺伝子群の転写を制御している。CDKインヒビターp21はp53によって発現誘導されDNA損傷に応じ細胞周期を停止させる。またDNA損傷程度に応じアポトーシスに導くためにアポトーシス誘導遺伝子BaxやPUMAなどの誘導発現を導くとされている。
我々はヒト培養細胞を用いたスピンドルチェックポイント解析より、p31comet(CMT2)は Mad2依存的スピンドルチェックポイント解除への関与していることを我々が明らかにしてきたが、さらなる解析よりp53もp31comet結合タンパク質であること、さらにsiRNAによるp31comet発現抑制細胞はDNA損傷を起こす薬剤に対し高度に感受性を示し、p53依存的アポトーシスを起こすことが明らかとなった。その標的遺伝子の発現を調べたところ、PumaやBaxなどのアポトーシス誘導タンパク質の発現レベルの変化は観察されなかったが、細胞周期調節因子p21タンパク質及びmRNA発現レベルがp31comet抑制細胞で著しく低下していることが観察された。さらにこの薬剤高感受性はTIP60によるp53 Lys120のアセチル化によることを明らかにした。このことよりp31cometはアセチル化を介したp53依存的アポトーシスと細胞周期停止の調節因子ではないかと考え解析を行っており、最新の解析結果と合わせて報告したい。