日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第52回大会
セッションID: OB-6
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放射線治療2
X線、重粒子線照射による脊索腫細胞株U-CH1由来細胞について初めて行ったin vitro特性解析
*津田 晃久加藤 宝光藤森 亮鎌田 正辻井 博彦岡安 隆一上坂 充
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キーワード: 脊索腫, 重粒子線, X線
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抄録
稀な骨腫瘍である脊索腫は主に外科療法か重粒子線治療を含む放射線治療もしくは二つの併用によって治療が行われているが、脊索腫のin vitro系での特質は明らかとなっていない。その理由は脊索腫細胞の入手が困難である事と、その細胞株の取り扱いが困難であることが挙げられる。本発表では、U-CH1由来の細胞をU-CH1-Nとしてin vitro系での以下の特性解析を行い、得られた結果をHeLa (子宮頸癌)と U87-MG(脳腫瘍細胞)の解析結果と比較を行った。
1)細胞周期、DNA量
HeLa, U87-MG, U-CH1-Nの倍化時間はそれぞれ18時間、24時間、3日となった。DNA量についてはU-CH1-Nが最も多く、4倍体に近い値を示し、異常な核型が見受けられた。
2)放射線殺傷率
X線感受性についてはU87-MG,U-CH1-NがHeLaよりも高くなり、重粒子線は3つの細胞いずれについてもX線照射よりも高い殺傷率を記録した。10%生存値で評価した生物学的効果(RBE)は、U87-MGとHeLaが70keV/μmの炭素線を用いると約2.5、200keV/μmの鉄線を用いると約3であったのに対し、U-CH1-Nは炭素線で2.5、鉄線で4を記録した。更にU-CH1-Nについてネオン線、アルゴン線、シリコン線を用いてRBE曲線を描くと、ピーク値は150keV/μmで約5.3を記録した。
3)薬剤への耐性
次に様々なDNA損傷を作成する4つの薬剤を用いて特性解析を行ったところ、カンプトテシン、マイトマイシンC、シスプラチンはU-CH1-Nに強い細胞毒性を示さなかったのに対し、DNA鎖切断を生成するブレオマイシンは強い細胞毒性を示した。
本発表のデータが示した脊索腫起源細胞を用いた細胞生存率は世界初であり、また、脊索腫治療に重粒子線が適している事を示している。
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© 2009 日本放射線影響学会
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