日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第53回大会
セッションID: OA-1-4
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A DNA損傷・修復
細胞内局在性を異にする内在性スーパーオキシドによる細胞増殖阻害へのアスコルビン酸及び低酸素の効果
*田野 恵三井上 絵里縄田 寿克菓子野 元郎関 政幸榎本 武美渡邉 正己
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抄録
背景] スーパーオキシドジスムターゼ(SOD)は、有害活性酸素種であるスーパーオキシド(SOX)を過酸化水素に触媒する。高等真核細胞では細胞内局在性が異なる3種のSODが知られており、SOD1は主に細胞質に、SOD2はミトコンドリアに局在する事が知られている。昨年、我々はニワトリDT40 細胞を用いたConditionalなSOD1,SOD2ノックアウト細胞を作成し、以下の事を報告した。1)SOD1 は細胞の生存に必須の遺伝子である。SOD2は生存に必須ではないが、細胞増殖機能には重要な役割を担っている。2)SOD1枯渇による致死効果はNAC、TIRONで抑制することが出来ず、アスコルビン酸(APM)でしか抑制できない。さらに、SOD1枯渇細胞で認められるSCE頻度、脱塩基部位の顕著な上昇も、APMの添加によって抑制される。これらの事は、APMと他のスカベンジャーの効果の違いが、内在性SOXの細胞内局在性に依存している事を示唆していた。 [結果と考察] 今回、内在性SOX の細胞内局在性に対するAPM の作用を検証するために、SOD1cDNAの発現形態を核内発現型(NLS)にした細胞と、核外排出型(NES)にした細胞とを作製し、解析を行った。NLS-,NES-SDO1細胞は、Tet OFF型コンデショナルSOD1ノックアウト細胞に、NLS (あるいはNES) GFP-SOD1が恒常的に発現させてある。従って、DOX添加後の野生型Tet OFF-SOD1は抑制され、細胞質か核に局在したSOD1のみが発現する。 1)パラコート処理後にNLS型、NES 型細胞でのSCEを比較すると、NLS型のみ有意にSCE頻度を抑制した。2)NES型SOD1細胞では、APMでのみ細胞増殖の抑制効果が解除された。一方、NLS型SOD1細胞の場合は、APMあるいはスカベンジャー存在下ではむしろ細胞増殖の遅延が見いだされた。3)低酸素培養下では、NES,NLS発現状態の方が分裂速度は回復した。これらの結果はAPMが細胞質よりは、主に核内の内在性SOXの除去に関わっている事を示唆している。またNLS型でAPMや他のスカベンジャーが細胞分裂をする事から、核内でのSOXの過度の除去が細胞増殖を阻害している可能性を示唆している。
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© 2010 日本放射線影響学会
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