日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第53回大会
セッションID: OA-6-1
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A DNA損傷・修復
放射線によるDNA損傷応答におけるNbs1とKu70の相互作用
*大原 麻希阿部 紘子田中 彩戸松 静香田内 広
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キーワード: DNA修復, NBS1, アポトーシス
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抄録
放射線によるDNA二重鎖切断(double strand break : DSB)は最も重篤なDNA損傷であり、DSBの修復不全は細胞致死や突然変異を引き起こし、細胞がん化につながる可能性がある。DSBは主に相同組換え(HR)修復と非相同末端結合(NHEJ)の二つの経路で修復されると考えられている。HR修復は細胞周期のS期からG2期に優先的に働き、姉妹染色分体を鋳型として修復を行うのに対し、NHEJは全細胞周期を通じて機能し、鋳型DNAを使用せずにDSB末端を再結合するとされている。 本研究では、DSB修復におけるHRとNHEJの相互作用と、両経路が破綻した場合の放射線によるDNA損傷への細胞応答を明らかにするため、HR修復に関与するNbs1, Rad54とNHEJに関与するKu70をノックアウトした細胞を用いて放射線照射後の細胞応答を解析した。 Nbs1/Ku70、Rad54/Ku70のダブルノックアウト細胞は放射線に非常に高感受性であり、DSB再結合はWTよりも顕著に遅かった。一方で、ダブルノックアウト細胞でも放射線照射30分後までにDSBの50~60%が再結合されることから、DSB再結合反応にはこれまで主要とされてきたHRとNHEJ以外の経路が存在することが強く示唆された。また、Rad54/Ku70細胞よりもNbs1/Ku70細胞の方が再結合が遅かったことから、典型的なHRとNHEJ以外の経路の一部にはNbs1が関与することが考えられる。Nbs1/Ku70ノックアウト細胞ではアポトーシスの割合が高く、未処理細胞でも約10%程度のアポトーシスが起こっていた。放射線によるアポトーシス誘導の時間経過を観察したところ、Nbs1ノックアウト細胞ではアポトーシス誘導が顕著に抑制されるのに対し、Nbs1/Ku70ノックアウト細胞ではWTと同様の頻度でアポトーシスが起こったことから、Ku70がNbs1欠損時のアポトーシス抑制に働いていることが確認された。
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© 2010 日本放射線影響学会
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