日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第53回大会
セッションID: OB-1-4
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B 放射線応答・シグナル伝達
胸腺アポトーシスにおけるカスペース活性化経路の解析:電離放射線誘発過程と紫外線誘発過程の相違について
*達家 雅明岡本 茉佑美古賀 里美三木 智晴渡辺 健多古家 早苗藤井 幹子太田 隆英
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キーワード: p53, Bcl-xL, Apaf-1
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抄録

p53腫瘍抑制遺伝子が正常な機能を持つマウス胸腺細胞の場合、X線照射後数時間以内にアポトーシスのシグナルがオンとなる。この過程で3型カスペースの活性化が観察される。紫外線を照射した時にも同様の現象が観察される。本研究では、X線照射と紫外線(UV-C)照射による3型カスペース活性化因子の検索をおこなった。ミトコンドリアからのチトクロームの遊離を調べたところ、X線照射においても紫外線照射においても大きな差異がなかった。しかしながら、3型カスペース上流因子である9型カスペースの活性化については、X線照射で活性化が観察されたものの、紫外線照射では活性化は観察されなかった。そこで、この原因について調べるために、アポトーシス誘導時における蛋白質の細胞内分布についてsubcellular fractionationをおこない解析した。界面活性剤可溶性細胞質画分、界面活性剤可溶性細胞核画分、界面活性剤不溶性画分に分画し、9型カスペース活性化因子であるApaf-1、9型カスペース制御因子として知られるBcl-xLの細胞内分布を調べた。その結果、X線照射では9型カスペースの活性化に伴いこれらの制御因子は分画分布の再配分があるのに対し、紫外線照射では分布変化が観察されなかった。そこで、FAS経路下流にある8型カスペースの活性化を調べたところ、紫外線照射ではこの経路の活性化と下流因子であるBidの活性化が観察された。以上の結果から、X線と紫外線では異なった細胞核内のDNA損傷とそのセンシング機構により、異なった応答経路を経たアポトーシス制御がおこなわれていることが明らかとなった。DNA損傷修復や細胞周期チェックポイント制御と同様、アポトーシス制御においても損傷DNAの種類によって異なったゲノム応答現象が動物細胞には存在すると考えられる。尚、本研究の遂行に御助言と御協力を頂いた崎田-数藤志帆、原田香菜美、神田暁史、河合秀彦、鈴木文男の各氏に感謝します。

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© 2010 日本放射線影響学会
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