日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第53回大会
セッションID: SL-2
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大会長特別企画「幹細胞と再生医療」
人工多能性幹(iPS)細胞の課題と展望
*沖田 圭介
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抄録
 ヒトやマウスの線維芽細胞に数種の遺伝子を強制的に発現させることで、細胞の状態を変化させ胚性幹(ES)細胞様の人工多能性幹(iPS)細胞が樹立されている。iPS細胞は生体外でほぼ無限に増殖し、培養条件を変えることで様々な細胞へと分化させることができる。この技術を応用することで疾患を持つ患者本人の細胞からiPS細胞を作製し、本人と同じ遺伝子情報を持つ神経細胞、肝細胞や心筋細胞など作り出すことが出来る。こうした細胞は疾患の発症機序の解明や、治療薬の開発、ひとり一人に合った治療薬の選択に役立つと考えられている。また、これまで入手が困難であったヒト細胞種を用いた放射線による生物作用の解析などにも利用できるだろう。基礎研究への利用が進む一方で、iPS細胞による再生医療も急速に世界中で研究が進行している。すでにマウスやラットなどの疾患モデル動物ではiPS細胞から作製した血液細胞や神経細胞での治療効果が報告されている。しかし、実際にiPS細胞を再生医療へ応用するためには、それぞれのiPS細胞の分化能力や安全性についてはもちろん、分化させた細胞が正常に機能するかなどを詳細に解析していく必要があるだろう。本会では最近の知見を踏まえて、iPS細胞の今後の課題と展望をご紹介したい。
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© 2010 日本放射線影響学会
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