日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第53回大会
セッションID: PA-35
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A DNA損傷・修復
MRN複合体とRAD51との関係
*加藤 晃弘小松 賢志
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抄録
ナイミーヘン症候群 (NBS) は、小頭症、免疫不全、成長遅延、高発がん性を特徴とするまれな常染色体劣性遺伝病である。NBS患者由来細胞は染色体不安定性やS期チェックポイント異常や放射線高感受性を示すことを特徴とする。NBSの原因遺伝子産物であるNBS1は、MRE11、RAD50とともにMRN複合体と呼ばれる安定なタンパク質複合体を形成しており、これまでの研究からMRN複合体は放射線などによって生じるDNA二重鎖切断 (DSB) の修復やDNA損傷チェックポイントで重要な役割を果たしていることが示唆されている。DSB修復は主に二つの経路、すなわち相同組換えと非相同末端結合によって行われる。NBS1は相同組換えによるDSBの修復に必要であることが明らかにされていたが、最近になって非相同末端結合にも必要であることが示唆されてきている。しかしながらそれぞれの修復機構における分子レベルでの役割については未だに十分には明らかにされていない。我々は、NBS1の分子レベルでの作用機序を解析するため、NBS1と結合する様々なタンパク質の同定を試みている。 昨年度の本大会では、相同組換えタンパク質であるRAD51とその制御因子であるBRCA2がNBS1と複合体を形成することを報告した。この複合体形成はNBS1のC末端領域を必要とすることを報告したが、より詳細な解析の結果、C末端に存在するMRE11結合ドメインが必要であることが明らかとなった。さらに、MRE11のNBS1結合ドメインはRAD51との複合体形成には必要でないことも明らかとなり、NBS1とRAD51の結合がMRE11を介して行われていることが示唆された。MRN複合体とRAD51がどのような相互作用を持っているのかについて現在解析を行っており、その経過について報告する予定である。
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© 2010 日本放射線影響学会
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