抄録
一昨年の本学会で、ヤマトヒメミミズ(Enchytraeus japonensis)の放射線応答遺伝子の探索を試み、放射線応答性が顕著な遺伝子としてアフリカツメガエルやマウス、ヒトのPoly (ADP-ribose) Polymerase 1(PARP-1)と高い相同性を示す遺伝子を同定したことを報告したが、今回この遺伝子、ejPARP-1に着目し、その発現変動をトランスクリプトレベルならびにタンパクレベルで解析したので報告する。 ejPARP-1のトランスクリプトレベルをRT-PCRによって定量化したところ、その発現は照射後2時間で急激に増加し、6時間でピークに達し、以後漸減した。また、線量に依存して増加し、300mGyでも有意な増加が認められたが、ミミズの成長段階すなわち体長の違いによって発現の変動は認められなかった。一方、ウェスタンブロットによりejPARP-1 のタンパクレベルを測定すると、放射線によってejPARP-1タンパクは増加するが、照射の有無に関わらずミミズの体長に強く依存しており、体長が長くなればなるほど全タンパク重量あたりのejPARP-1レベルは顕著に減少した。免疫組織化学によりejPARP-1タンパクの高発現部位は分化増殖が盛んな組織部位と一致することが示され、ejPARP-1の放射線による発現誘導はシロイヌナズナの放射線によるPARP-1の発現誘導に関する報告と同様に転写と翻訳レベルが一致しないことが明らかになった。