日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第53回大会
セッションID: PE-12
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E 放射線治療・修飾
中皮腫モデルマウスの重粒子線治療効果のPETイメージングによる検討
*須堯 綾辻 厚至須藤 仁美吉田 千里曽川 千鶴宮原 信幸小泉 満佐賀 恒夫
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抄録
中皮腫は、主にアスベストばく露に起因し中皮から発生する予後不良な腫瘍である。中皮腫の治療は、手術、抗がん剤、放射線治療を組み合わせて行われるが、放射線治療の効果は低い。重粒子線は、X線に比べ生物効果比が高い上に、腫瘍に線量を集中できるため、中皮腫治療への応用が期待される。そこで、中皮腫モデルマウスでの重粒子線の腫瘍抑制効果を検討するとともに、治療効果を早期に画像診断できるか検討した。ヒト中皮腫細胞株(上皮型、肉腫型)をヌードマウスの大腿部皮下に移植し、炭素線(290MeV/u, 6-cm SOBP)を2-30GyまたはX線(200kVp, 20mA)を5-60Gy照射した。炭素線30GyおよびX線60Gy照射群では、上皮型、肉腫型ともに、照射2週間後まで腫瘍サイズは増加したが、その後縮小に転じ、約30日で完全に消失し、75日後まで再増殖は観察されなかった。治療効果の早期画像診断の検討のために、炭素線30GyとX線60Gy照射後の3H-FLTと14C-FDGの腫瘍集積の経時変化を検討した。上皮型では、重粒子線、X線ともにFLTの集積が照射3時間後と1日後で照射前に比べ低下し、7日後に集積が上昇した。Ki-67の免疫染色では、3時間後と1日後には細胞増殖が停止、7日後には再増殖が見られ、上皮型腫瘍へのFLT集積の推移と相関が見られた。肉腫型では、重粒子線ではFLTの集積はほとんど変化しなかったが、X線ではFLTの集積は3時間以降減少した。FDGの集積は、線質、腫瘍の組織型に関わらず治療効果とは相関しなかった。炭素線では、X線の半分の線量で治療効果が認められ、臨床への応用が期待される。治療効果の評価においては、上皮型ではFLTによる早期診断の可能性が示されたが、肉腫型では、FLT、FDGともに正確な評価は困難であり、さらなる検討が必要である。
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© 2010 日本放射線影響学会
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