抄録
これまでに、放射線の効果は照射細胞のみならず照射細胞の近傍に存在する非照射細胞にまで及ぶことが明らかになってきた(放射線誘発バイスタンダー効果)。その発生機序の全容はいまだ明らかでないが、照射細胞から放出される活性酸素種や一酸化窒素、サイトカイン、ヌクレオチドなどの情報伝達因子が細胞間ギャップ結合や培地を介して非照射細胞に到達し、コロニー形成能の低下や染色体異常の増加などを引き起こすと考えられている。このように、バイスタンダー効果は現象面といくつかの情報伝達因子について明らかになりつつある一方で、その詳細な分子メカニズムや生物学的意義には不明な点が多い。我が国では線質の異なるマイクロビームを共用できる施設が複数あるが、マイクロビームは細胞集団のごく一部だけを正確に照射することができるため、バイスタンダー効果研究の有効なツールとして利用されることが多い。本ワークショップでは、マイクロビームなどを用いて放射線誘発バイスタンダー効果を研究されている国内外の先生方から、これまでに得られた研究成果と今後の展望についてご発表いただく。