抄録
広島原爆による人工放射能の局地的な降下物の実態を現時点で知ろうと思うと、グローバルフォルアウトの影響を受けていない土壌などの試料のサンプリングとそれらの放射線測定による結果が直接的な証拠である。また、コンピュータを使った放射性降下物の再現計算も黒い雨の実態解明の役に立つと考えられる。再現の基本は、核爆発によって生じた核分裂生成物あるいは誘導放射能が風に乗って流れて、そこで雨と共に、あるいは粒子として降下する状況を計算するものである。モデル計算が実施できるかどうかは、より良い初期条件と境界条件を設定することができるかどうかにかかっている。
初期条件と境界条件について、雲の高さ、火災の燃焼率、原爆雲と粉塵、火災煙の分布、一般風、原爆由来の137Csの分布、原爆由来の236Uの分布、雨の降った領域、雨の化学的性状等のデータセット作成を準備している。