日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第54回大会
セッションID: OF-2-1
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F: 被ばく影響・疫学
福島核事象における公衆の線量評価
*高田 純
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抄録

大津波に襲われ環境へ放射性物質が顕著に漏えいした福島第一核エネルギー施設の事象に関連した福島県民をはじめとした東日本の公衆の線量評価を4月と6月に現地調査をもとに行なった。4月6日に陸路、札幌を出発し、青森、仙台、福島、東京と、同月10日まで放射線衛生が調査された。福島20km圏内を含む全調査での調査員の受けた外部被曝の積算線量は0.11ミリシーベルト。甲状腺への放射性ヨウ素の蓄積は検出されなかった。こうして調査は安全に実施された。札幌および青森では、顕著な核分裂生成物は検出されなかった。仙台、福島、東京でのガンマ線スペクトロスコピーで、ヨウ素131、セシウム134、セシウム137が顕著に検出された。福島から少量持ち帰った土壌を5月に測定すると、ヨウ素131は、ほぼ消滅していた。  甲状腺に蓄積されるヨウ素131による内部被曝線量検査が成人希望者総数76人に対して行われた。検査当日の福島県民66人のヨウ素放射能の最大値は3.6キロベクレル、平均 1.5キロベクレル。6人は検 出限界0.1キロベクレル未満であった。20km圏内浪江町からの避難者40人の平均甲状腺線量は5ミリシーベルト、チェルノブイリ被災者の1千分の1以下程度と、甲状腺がんのリスクは無いと判断する。 浪江町や東日本各地の空間線量率の値は、最初の1か月間で4分の1以下になるなど、放射能の減衰にしたがって、放射線環境は減衰傾向にある。福島を除く東日本の公衆の個人線量は屋内滞在による遮蔽効果もあって、年間外部被曝線量は概して1ミリシーベルト以下のレベルである。福島県民は、屋内退避効果もあり、2011年の年間線量は概して10ミリシーベルト以下である。3か月後の6月後半に、南相馬市、いわき市、郡山市で計33人の放射性セシウムの全身量を検査した。結果は、全員が推定年間線量として0.1ミリシーベルト未満だった。

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