日本放射線影響学会大会講演要旨集
日本放射線影響学会第54回大会
セッションID: PC-3
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C: 放射線発がん
発達期における肝細胞の放射線応答と突然変異の解析
*澤 百合香尚 奕澤井 知子山内 一己柿沼 志津子野川 宏幸島田 義也
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キーワード: 年齢依存性, 肝臓, 突然変異
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抄録
【目的】近年、小児の医療被ばくの増加に伴い発達期における放射線の影響が懸念されている。一般に、小児は成人に比べ放射線による発がんリスクが高いといわれている。これまでの動物実験から、新生児期に被ばくしたB6C3F1マウスは、成体期や胎児期の被ばくに比べ肝がんの発生率が高く、発がん時期も早いことが明らかになっている。そこで我々は、肝がん発生の年齢依存性のメカニズムを明らかにするため、胎児期、新生児期および成体期の肝細胞の被ばく後の応答を経時的に解析し、新生児期の肝細胞は放射線照射後も増殖し続ける可能性について昨年の本学会で報告した。今回は放射線照射後の新生児期の肝細胞の増殖を確認し、また、発がんまでの長期的な遺伝子突然変異の経時的変化を解析した。
【材料と方法】胎児期(胎生17日)、新生児期(1週齢)および成体期(7週齢)でγ線4Gyを全身照射し、BrdUの取り込み実験により肝細胞の増殖を経時的に解析した。更に、変異解析用B6C3F1 gpt-deltaマウスの1週齢、10週齢にX線3.8Gyを全身照射し、10週齢、10ヶ月齢、18ヶ月齢において肝臓を採取した。肝臓からDNAを調整し、EG10ファージとして回収し、このファージを大腸菌に感染させ選択培地で形成されるコロニー数から突然変異体数頻度を算出した。また、変異体コロニーの塩基配列を解析することで変異スペクトラムや同一変異体が占める割合(クローナリティ)の算出も行った。
【結果】BrdUの取り込み実験から、新生児期の肝細胞では放射線被ばく後に活発に増殖することが確認され、損傷を持ったまま増殖し続けることが、肝がん感受性の要因の一つであることが示唆された。gpt assayによる突然変異解析から、1週齢照射群では年齢と共に突然変異のクローナリティが上昇する傾向が見られた。本発表では、10週齢照射群の解析結果も併せて報告する。
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© 2011 日本放射線影響学会
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