2021 年 39 巻 1 号 p. 4-12
東日本大震災,東京電力福島第一原子力発電所事故から10 年が経過した.福島県では,「入口」の段 階で安全性を担保し,流通経路にのる「出口」段階でさらに全量全袋検査を行い,安全と安心を担保すると いう2 段階の仕組みとなっていたが,その取り組みが周知されておらず,事故直後のイメージのままの消費 者が現在でも一定数存在している.本稿では福島県における10 年間の放射能汚染対策,流通風評対策につい て整理し,震災前には戻れない福島の産地において新しい産地と流通システムを構築するための課題を明ら かにした.震災後10 年を機に復興庁の縮小再編や,福島県産米全量全袋検査からモニタリング検査への移行 が検討されているが,新たな産地形成に関する指針は明確ではない.福島県における原子力災害対策の成果 は,①放射能汚染対策で培った土壌微生物や土壌成分の研究,②放射性物質移行メカニズム研究により進め られた作物の特性,③全量全袋検査など広域検査体制により構築された安全性の担保と認証システム,④健 康への影響や配慮などである.これらを総合し風土の違いに基づく農作物の特性を証明し,新しい産地化へ 繋げることが急務である.