抄録
本稿は,八重山の自治会組織の上層役員が,村落祭祀の日選りに関わり,また女性司祭に対して祈願の依頼をおこなうなど,祭祀の実施・運営の中心的な役割を担っていることについて,組織の歴史的背景に注意を向けながら検討したものである。
上層役員の果すこうした役割の背景には,上層役員と系譜的につながる琉球王国時代の村役人「世持」「田ぶさ」の存在があった。各地の口頭伝承や歴史資料を照合していくと,彼らは百姓層の社会生活に関する指導・監督役を担う一方で,村落祭祀にも深く携わり,祭祀を滞りなく実施する役割を担っていたのである。