抄録
本稿は,台湾との比較を通じて,日本の教育法制における性の多様性の尊重に関する制度的
課題を明らかにすることを目的とする。機能的比較法のアプローチから,日台の教育基本法及び
関係法令を検討し,制度的対応の実態を分析した。その結果,日本には台湾の性別平等教育法
のような個別法が存在せず,教育現場での対応は受動的かつ限定的であるほか,人権教育が一
部教員の努力に依存し,性的マイノリティは制度上周縁に位置づけられているという課題が浮
き彫りとなった。こうした状況を是正するには,人権モデルの視点から既存制度を再構築し,法
的拘束力を有する個別法の整備と,包括的差別禁止法の制定が不可欠であると結論づけた。