抄録
本研究は,2019 年の首里城火災後の再建のためのクラウドファンディングにおいて寄付者が
残したコメントを分析対象とし,首里城や沖縄に対する人々の愛着の構造を解明することを目
的とした。テキストマイニングによる分析の結果,県内寄付者からは地域のアイデンティティ
や文化的所有意識を示す表現が頻出し,県外寄付者からは修学旅行や家族旅行などの個人的な
観光体験と結びついた表現や,「沖縄が大好き」という首里城の枠を超えた沖縄に対する感情の
表現が特徴的に見られた。文化遺産首里城が地域住民のアイデンティティ形成と,来訪者の情
緒的な場所愛着の双方に寄与すると考えられる。