抄録
歩行ロボットには, その対地適応性を向上するためにも視覚センサの導入が不可欠である.本研究は, 歩行ロボット搭載を前提とする視覚システムを特に地図生成視覚システムMARS (MAp Realization System) と呼び, その主要構成要素である近距離地表の3次元形状を計測するレーザ光投射型レンジファインダについて, 性能向上のための方策を探るものである.具体的には, 特に重要な特性である自然の背景光の中から投射光による測定対象上の投影パターンを高度に分離検出する機能を得るため, 新たに, CCD等の走査型カメラで得られる映像信号の差分処理とその差分信号の正負パルス対の検出を行なうDDD法と呼ぶ信号処理法を導入する.DDD法のうち入力ビデオ信号の最大正パルスのみを検出する手法をMaxDDD法と呼ぶ.光学干渉フィルタ, MaxDDD法, 走査線間のスリット光の連続性に基づくソフトウェア的雑音除去の3段階の雑音対策を行なったシステムを実際に構成し, 高いSN比が得られることを実験的に示す.さらに, 揺動外乱を計測中にリアルタイムで補正し地図を生成するための, 構造上, 演算処理上の検討を行ない, 姿勢補正を含む計測から位置算出までの時間を1点当たり240 [μsec] まで短縮し, 実用上十分なリアルタイム性を実現できることも示す.開発したMARSレンジファインダシステムは十分軽量 (1.8 [kg] ) でコンパクトに構成される.以上のことにより, 歩行ロボット搭載用の有効なレンジファインダの実現可能性を明確化する.