様々な炭素材料の二次電子放出特性について,オージェ電子分光分析装置(SAM)と特製ファラデーカップ付きサンプルホルダーを用いて検討した.本手法を用いた過去の検討によって,二次電子放出係数δは表面組成に大きく依存することが確かめられている[J. Surf. Anal. 11, 71 (2004)].本報告では,組成は同一であり,かつ異なる表面構造をとることができる炭素材料を用いて二次電子放出特性を検討した.その結果,(1)いずれの炭素材料ともδ値は小さく,二次電子放出を抑える効果が期待される.(2)表面粗さの増大に伴うδ変化は,一次電子エネルギーの低い領域と高い領域で異なった.(3) δの値は200 nm下の基板の影響を受けない,等の知見が得られた.δを評価するにあたり,表面組成だけではなく構造,配向性,粗さなどの要因によって値が影響を受けることを心得ておく必要があると考えられる.