抄録
近年では,解析ソフトウェアの高度化により,1つのスペクトルの単純な解析であれば,自動的にデータ解析を実施することができる.これはデータ解析の再現性や客観性を担保する上で重要である.一方で,データ解析がブラックボックス化する傾向にある.そのため,知らず知らずのうちに不自然な過程のもとで解析をしているケースも少なくない.分光スペクトルの解析においても,同様の傾向が見られる.そこで本記事では,分光スペクトル解析における数理構造のほんの一端をベイズ統計の枠組みで紹介する.特に本記事では誤差関数の設計に重きを置いて解説する.そして,ベイズ統計の枠組みを利用すると,熟練した解析者が実現するような複数のスペクトルの統合解析が自然に導かれることを示す.