Journal of Surface Analysis
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巻頭言
講義(連載)
  • 田沼 繁夫, 篠塚 寛志
    2024 年31 巻2 号 p. 101-
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/05/04
    ジャーナル フリー
    バンドギャップ(Eg)を有する物質における非弾性平均自由行程(IMFP, Inelastic mean free path)の計算においてFull Penn algorithm(FPA)を用いる方法について解説した.また,100 keVを超えるような高エネルギー領域におけるIMFP を計算するために相対論補正をFPA およびPenn の単極近似(SPA, Single pole approximation)に施す際の詳細について解説した.IMFP計算におけるEgの効果には2つの要素がある.一つは電子のエネルギー損失の最小値と最大値が変化すること,二つは Eg の存在のために変化する運動量移送をどのように表現するかである.これらについてはBoutboul ら [T. Boutboul et al., J. Appl. Phys. 79, 6714(1996) ]の方法を参考にして開発されたFPA-BABC [H. Shinotsuka et al., Surf. Interface Anal. 54, 534 (2022) ]について解説した.FPA,SPA への相対論補正の適用については,500 keV 以下のエネルギー領域では電子の運動に対して相対論的動力学補正を行えば良いので,比較的簡単に組み込むことができる.また,相対論的SPAと相対論的FPA-BABCが与える200 eVから500 keVにおけるIMFPについて,45種類の無機化合物,14種類の有機化合物で比較検討を行った.その結果,計算したSPA-IMFPとFPA-BABC-IMFPはこのエネルギー領域では,両者の相対差の平均値は無機化合物ではおよそ2%以下,有機化合物では1%以下であった.両者の最大の相違は200 eV- 500 keVのエネルギー範囲でおよそ3%であった.以上から,Eg を有する物質について,200 eV- 500 keVのエネルギー範囲のIMFPの計算に相対論的SPAは相対論的FPA-BABCと同様な正確さで使用することができることが分った.
解説
  • 川崎 聖治
    2024 年31 巻2 号 p. 120-
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/05/04
    ジャーナル フリー
    XPSスペクトルにおいて,光電子のメインピークやAuger電子ピーク以外のピークはサテライトピークと総称される.サテライトピークの発生原因や事例の正しい理解は,化学状態を正しく識別することや電子状態を理解することに繋がる重要なものである.本稿では,サテライトピークについての情報を整理したので紹介する.
  • 村上 諒
    2024 年31 巻2 号 p. 137-
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/05/04
    ジャーナル フリー
    近年では,解析ソフトウェアの高度化により,1つのスペクトルの単純な解析であれば,自動的にデータ解析を実施することができる.これはデータ解析の再現性や客観性を担保する上で重要である.一方で,データ解析がブラックボックス化する傾向にある.そのため,知らず知らずのうちに不自然な過程のもとで解析をしているケースも少なくない.分光スペクトルの解析においても,同様の傾向が見られる.そこで本記事では,分光スペクトル解析における数理構造のほんの一端をベイズ統計の枠組みで紹介する.特に本記事では誤差関数の設計に重きを置いて解説する.そして,ベイズ統計の枠組みを利用すると,熟練した解析者が実現するような複数のスペクトルの統合解析が自然に導かれることを示す.
技術報告
  • 西田 真輔, 大友 晋哉
    2024 年31 巻2 号 p. 155-
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/05/04
    ジャーナル フリー
    従来のMg Kα線およびAlKα線を用いたXPSに比べて,バルク敏感な化学状態分析を非破壊で行うために,単色化Cr Kα線および単色化Ga Kα線が装着された実験室系HAXPESの検討を行っている.AgとCuに関しては,Ag 3d5/2およびCu 2p3/2光電子ピークのケミカルシフトが比較的小さいため,非弾性平均自由行程 (IMFP) の大きなAg L3M4,5M4,5およびCu KL2,3L2,3オージェ電子を用いたバルク敏感な化学状態分析を検討している.本報告では,13種類のAg元素を含む試料(Ag,Ag0.09P0.1Cu0.81, Ag0.6Cu0.4, Ag2O, Ag2O2, Ag2S, AgI, AgBr, AgCl, AgF, Ag2CO3, AgNO3, and Ag2SO4)を用いて単色化Cr Kα線励起によるAg 3d5/2 − Ag L3M4,5M4,5およびAg 2p3/2 − Ag L3M4,5M4,5の修正オージェパラメーターならびに5種類のCu元素を含む試料(Cu,Cu0.6Zn0.4,Cu2O,CuBr,CuO)を用いて単色化Ga Kα線励起によるCu 2p3/2 − Cu KL2,3L2,3の修正オージェパラメーターを測定し,これらのワグナープロットを作成した.また,本検討結果を溶解・凝固した銀ろう(Ag0.6Cu0.4)表面に形成される酸化層の化学状態分析に適用し,有効な手法であることが確認された.
エクステンディド・アブストラクト
  • 花ノ木 祥平
    2024 年31 巻2 号 p. 168-
    発行日: 2024年
    公開日: 2025/05/04
    ジャーナル フリー
    当社主力製品群の一つは, 様々な機能を有するテープやフィルムである. そのため, 被着体と接する面の特性を把握することは重要である. そのため, 当社では, TOF-SIMSなどの表面分析の技術強化を行っている. TOF-SIMSでは, 得られるスペクトルが非常に複雑であり, そのようなデータを効率的に解析することが課題の一つである. 本発表では, 主成分分析(PCA), 多変量スペクトル分解(MCR), オートエンコーダー(AE) [青柳里果, 表面と真空 65, 4 (2022)]を, ①塗膜表面の凸状油分の分析, 及び ②粘着テープ剥離後の糊残り成分の分析の, 各取り組みの中で取得したTOF-SIMSデータに対し適用した結果を報告する. 検討の結果, いずれの解析法も各成分の特徴を抽出し, 分子構造を推定するに至った.
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編集後記
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