2024 年 42 巻 p. 1-12
本研究では、「中小企業経営者がIT経営に着手するに至った意思決定過程を明らかにし、IT経営推進への意識に影響を与える要因を検討すること」を目的に研究を行った。研究方法として、福岡県飯塚市の中小企業経営者を対象にインタビュー調査を実施し、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)の手法を用いて分析した。その結果、13の概念が抽出され理論的飽和が確認された。加えて、概念生成と並行して5つのカテゴリーを生成し、相互の関係をストーリーラインとしてまとめた。分析結果から、IT経営を推進する企業経営者の意識変化の過程を一つの意思決定プロセスとして示すことに繋がった。さらに、経営者のIT活用経験の有無によってIT導入を意識するきっかけが異なることが示された。そのため、中小企業のIT経営を推進していくためには、経営者にITの価値を認識させることや導入イメージを想起させることが推進意識の向上に繋がるとの結論に至った。