ビジネス実務論集
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理論・調査研究
論文
  • 栁田 健太
    2024 年 42 巻 p. 1-12
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/01
    研究報告書・技術報告書 フリー

     本研究では、「中小企業経営者がIT経営に着手するに至った意思決定過程を明らかにし、IT経営推進への意識に影響を与える要因を検討すること」を目的に研究を行った。研究方法として、福岡県飯塚市の中小企業経営者を対象にインタビュー調査を実施し、修正版グラウンデッド・セオリー・アプローチ(M-GTA)の手法を用いて分析した。その結果、13の概念が抽出され理論的飽和が確認された。加えて、概念生成と並行して5つのカテゴリーを生成し、相互の関係をストーリーラインとしてまとめた。分析結果から、IT経営を推進する企業経営者の意識変化の過程を一つの意思決定プロセスとして示すことに繋がった。さらに、経営者のIT活用経験の有無によってIT導入を意識するきっかけが異なることが示された。そのため、中小企業のIT経営を推進していくためには、経営者にITの価値を認識させることや導入イメージを想起させることが推進意識の向上に繋がるとの結論に至った。

研究ノート
  • 武村 順子
    2024 年 42 巻 p. 13-24
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/01
    研究報告書・技術報告書 フリー

     医療経営においては、働き方改革、医療DX、医療費削減など、国の施策が前提にある中で、経営上の問題と臨床上の問題を譲歩させながら運営を継続しなければならない。特に、プライマリ・ケアの担い手となる中小規模医療機関(300床未満病院 診療所)の経営安定は、国民の健康保持増進や医療費の問題からも重要な位置付けにある。これらの解決策の一端に、医療系事務職人材の有効活用がある。

     これらを実現させることを課題と捉え、研究目的を「中小規模医療機関に勤務する医療系事務職人材の職務満足に影響する要因を探り、その結果を基に人材有効活用の提言を行うこと」とし研究に着手した。研究の方法として、まず、「医療の質」と「経営効率」を両立させるための組織変革について事例検討を行った後、全国の中小規模医療機関の医療系事務職人材に対しアンケート調査を実施し、そのデータを基に、因子分析、重回帰分析を行った。さらに、属性の特徴、先行研究、事例などからの視点も踏まえ、医療系事務職人材の有効活用の障壁について論究した。

     その結論として、管理体制の整備、医療系事務職人材に対する認識を変える、人事考課の再考、組織風土の改善、教育を受ける機会を作る、という5項目について組織的に取り組むことを医療系事務職人材有効活用の提言とした。

教育開発研究
論文
  • 湯口 恭子
    2024 年 42 巻 p. 41-51
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/01
    研究報告書・技術報告書 フリー

     本研究は、大学生がロールモデルとしてイメージする人物像を「家族や友人・知人」と「著名人・架空の登場人物」に区分し、以下の2点を明らかにすることを目的とした。①「家族や友人・知人」「著名人・架空の登場人物」といった多様性のある広義のロールモデルが、大学生のキャリア探索に正の影響を与えるのかを明らかにする。②「家族や友人・知人」と「著名人・架空の登場人物」というロールモデルのタイプによって、大学生のキャリア探索は異なるのかを明らかにする。

     調査会社を通して、大学1~4年生に調査(2021年10月5日~18日)を実施した。調査対象者392名の内、380名(男性189名、女性191名、平均年齢20.18歳)を分析対象とした。

     ロールモデルがいると回答した学生の方が、いないと回答した学生よりも全てのキャリア探索に正の影響が確認された。これにより、ロールモデルがキャリア探索を活発にしていることが明らかになった。キャリア探索の「自己理解」「情報収集」においては効果量も高く、明確な差が出ていると考えられる。狭義のロールモデル(湯口2022)ではなく、多様なロールモデルを設定した本研究においても、キャリア探索におけるロールモデルの有効性が明らかになったと言える。

     「家族や友人・知人」と「著名人・架空の登場人物」の間に、キャリア探索の有意差はなかった。ロールモデルは日常、直接的に出会う身近な人物なのか、間接的に出会う著名人や架空の登場人物なのかというタイプの違いに関わらず、キャリア探索に正の影響を与えていたということになる。

     これまでのロールモデルは、日常、直接的に出会う身近な人物が対象であり、間接的なロールモデルの研究は少なかった。本研究は、著名人や架空の登場人物であっても、キャリア探索を促進させる可能性を示唆している。イメージするタイプの違いに関わらず、ロールモデルを持つことそのものがキャリア探索に意味を持つ可能性が示された。

研究ノート
  • 岩井 貴美
    2024 年 42 巻 p. 53-64
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/01
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     本研究では、大学生低学年のキャリア探索に焦点を当て、インターンシップ科目を履修した学生と未履修の学生を比較して、キャリア探索にどのような差異があるのか検討した。まず、インターンシップ科目履修生と未履修生を対象にアンケート調査を行い、職業決定の状態、職業選択の自己決定的な動機の比較を行った。データ分析の結果、インターンシップ科目履修生ほど、安直な職業選択状態を避けている結果となった。また、インターンシップ科目を履修し、インターンシップへ参加しようという意思や行動は、自己決定性の高い動機と関連性があることが分かった。さらには、ストレスに対して積極的対処をしている学生ほど職業選択が促進され、自己決定性の高い動機と関連性があることが分かった。本研究の結果は、コロナ禍でのストレスフルな大学生活において、低学年のキャリア探索状況を把握し、さらに促進させる支援を期待されるインターンシップ科目のあり方に示唆を与えるものである。

  • 榎澤 祐一
    2024 年 42 巻 p. 66-76
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/01
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     マス・メディア視聴習慣の衰退などにより人々が取得する情報は個性化してきており、大学でのマーケティング教育では、特定の商品・サービスを例示して理論を教授することが年々、困難になってきている。近年では産学連携によるプロジェクト型授業が導入されており、実地的学習として、この問題を解消する方策としても有効であるが、企業が受け入れられる学生の人数には限りがある。そして、マーケティング系科目は商学系学部だけでなく文理の枠を超えて多岐にわたる学部で開設されている。そのため講義でも、個性化した情報を上書きするような学習者共通の体験を提供して、個人の体験ではなく教科書の理論を通じてビジネスを考察できるように学習者を誘導する必要がある。

     そこで筆者はeスポーツの体験課題を導入した講義法によるマーケティング教育プログラムを提案する。eスポーツはアウトドア・スポーツに参加できない人も参加でき、さらには教室やオンラインといった環境的制約があっても実施できる点で講義法との親和性が高い。eスポーツを体験課題として導入した嘉悦大学マーケティング科目の履修者の調査回答データを質的研究方法論の分析枠組みで分析した結果、授業上の評価課題(パフォーマンス課題)の達成度合いの自己認識が高い際に、マーケティング論の基礎概念をビジネスに結びつける有用性の理解に至っていることを確認した。本研究によるeスポーツ体験の講義法への導入は、マーケティング教育だけでなく様々な分野で適用可能である。また、伝統的スポーツにおける運動能力向上の目的以外にも、eスポーツを組み込んだ教育プログラム開発の可能性を拡大する。

  • 町田 由徳
    2024 年 42 巻 p. 77-88
    発行日: 2024年
    公開日: 2024/05/01
    研究報告書・技術報告書 フリー

     デザイン思考(Design Thinking)は、デザイナーがデザインプロセスで用いる思考方法を体系化したものであり、非連続的な「イノベーション」創出のための方法論として実務の分野で注目を集め、導入が進んでいる。

     本稿ではものつくり大学1年生の学生209名に対してデザイン思考の教育をPBL形式で実施し、その効果を計量テキスト分析と作品評価により検証した。

     結果、デザイン思考に関わる「define(定義)」「ideate(アイデア化)」「prototype(試作)」の要素について、多くの学生の間で意識が行われた上で課題に取り組まれていたことが確認出来たが、「empathize(共感)」、「test(試験)」に関わる要素はほとんど確認出来なかった。

     またデザイン思考要素の他には「コミュニケーション」に関わる要素の記述が多く確認された。

     特に「empathize(共感)」、「test(試験)」の能力の伸長を図るために、他の科目との内容の関連性も考慮したカリキュラム設計が今後の課題である。

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