1999年に選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)が本邦臨床に導入されて,不安症の治療および病態の理解は大きく進歩した。選択性が強く,セロトニン再取り込み阻害作用以外の作用機序をもたないSSRIが不安症治療に有効であることから,脳内で細胞外セロトニン濃度を増やすことが,直接不安症の症状を改善させるということができる。さらに,不安・恐怖の神経回路が1993年以降に詳細に解明されたことを契機に,SSRIが扁桃体に作用し,その神経機能を抑制することにより抗不安作用をもたらすこと,その作用は5-HT1A受容体への刺激を介していることが動物実験で明らかになった。これらの動物実験から得られた仮説はfMRIを使ったヒトの画像研究でも支持されている。SSRIの作用機序解明により,不安症の病態と治療を神経回路,神経伝達物質の観点から不安症の病態を理解し,新規治療法を開発することが将来可能になることが期待される。